無資格者による臨床心理行為(心理療法/心理カウンセリング)について

 

 最近、東北地方でも「臨床心理士」「公認心理師」という、心理療法を行うには必須/最低限の資格を持たずに「カウンセリング」を謳う人達が増えているとのことです。

 

 当方は「福島/東北に本物の心理臨床を」という理念を持って設立しておりますし、心理臨床の啓蒙活動は、臨床心理士と公認心理師の両資格を成立させた先達に対する、そして次世代の臨床家に対する、何より心理療法を求める方々に対する我々世代の義務だと考えますので、この場で説明させていただくことにしました。

  

 まず、実際問題として、「臨床心理士」「公認心理師」を持たずに心理の専門家や専門的心理支援を謳うということは、医師免許を持たずに医者を名乗り、医療行為を行うに近似です。

 

 資格の性格として、業務独占と名称独占という法的な違いがあるため、全く同義とは言えませんが、本質的な意味では同義と考えて差し支えないでしょう。

 

 医師免許を持たない自称医者や、司法試験に受かっていない自称弁護士は許されないにも関わらず、心理の専門職はあまりに甘く見られているようです。

 

 この原因はまさに法にあり、「カウンセラー」と名乗ることは無資格でも可能となっているためでしょう。

 

 よって、臨床心理士でも公認心理師でもない「カウンセラー」が存在するという現状があります。

 

 心理の専門資格である「臨床心理士」と「公認心理師」を取得するためには、基本的に指定された大学院を出ている必要があります。

 

 つまり、心理臨床家/心理専門職とは、それだけの試験を通り、学び、研究し、修了し、資格を取ることで初めてスタートラインに立てる、それくらいせねば話にならぬ仕事だということです。

 

 これは学歴の話をしているのではありません。恵まれた仕事ではないと分かっていながら、それでも時間と労力とお金を費やし専門資格を取り、以降も学び続けるという、その覚悟、意欲、誠実さの話です。

 

 例えば、自分や家族、知り合いが心理療法で救われたから(逆に提供された内容に不満を持ったから)、今度は自分がカウンセラーとして誰かを救いたい、自分で経験もしたし、カウンセリングの本も読んだ、だから自分にも出来るはずだ、などが無資格者によくある心理です。

  

 ですが、心理臨床実践とは、そんなに簡単な話ではありません。

 

 「私は医者に大病を治してもらった、だから今度は私が他人の大病を治すんだ」と言って医学部に行ってもいない、当然、医師免許を持ってもいない人が医者を名乗り、医療行為を行うことは許されないでしょう。

 

 心理療法/心理カウンセリングも本質的にはそれと同じです。

 

 日本では最高峰かつ最低限の心理専門職(心理の専門家)と言える資格が「臨床心理士」と「公認心理師」なのです。

 

 医者の最高峰かつ最低限の資格が医師免許であるのと同じです。

 

 専門医に関しては、臨床心理士資格が設立当初より5年に1度の更新制を採用していますので、やはり近似です。

 

 この更新制を採っているという事実からも、臨床心理行為(心理療法/心理カウンセリング)の難しさがお分かりになるかと思います。

 

 しかも「臨床心理士」も「公認心理師」も最低限度の知識保証に過ぎません。これも医師同様でしょう。

 

 この資格、つまりは最低保証すら持たずに臨床心理行為を行おうというのは、あまりにも無謀で危険、非治療的だと言えるでしょう。

 

 もちろん、非専門家による臨床心理行為ではない「カウンセリング」が役立っている人も居るのでしょう。それを否定するものではありません。

  

 ただそれは専門的心理療法ではない、何か別のものだということです。

 

 にも関わらず、心理の専門家を名乗るということは、心理療法を求めている方に虚偽を伝えている、極力控え目に言っても誇大広告をしている事になるでしょう。問題の本質はここにもあり、そして非常に重大です。

 

 

無資格者の特徴 その一例

 

① クライアント以外の人が居る場で「カウンセリング」を行う。

・ルームの外に声が聞こえるような環境で「カウンセリング」を行う。

・心理臨床家には守秘義務がありますから、これは専門家としてありえない行為です。

 

② 保有資格の明記が無い。

・「心理カウンセラー」を自称しているだけなど。

 

③ 保有資格に臨床心理士と公認心理師以外の資格しか書いていない。

・〇〇カウンセラー等、通信講座や私塾、専門学校等が設定しているものしか記載されていない。

・精神保健福祉士、元看護師、元教員など、他職種の資格しか書かれていない。

 

④ 写真や経歴(心的外傷歴や病歴)など個人的なことが紹介されている。

・精神分析的心理療法を行う臨床家には匿名性が求められるので、これもありえないことです。

・ある大家は、似顔絵を描くことすら禁じたほどです。

 

⑤ 自分の話やアドバイスめいたことばかり言う。

・愚痴や自慢話が多かったり、自分の悩みを話し出したりする。

・自分が勝手に正しいと思い込んでいるアドバイスをして来て、それに従わないと不機嫌になる。

 

⑥ 駄目なものを駄目と言えない。

・何が治療的で何が非治療的なのか分からないため、何が駄目なのか判断がつかない。よって明らかに非治療的なものであっても駄目と言えない。

 

⑦ 治療に関係なく、自分の価値基準で判断して駄目出しをする。

・個人的感想ばかり言うなど。

 

⑧ 通院/入院が必要な状態であっても、そのように伝えられない。

・どういった状態に精神科通院を要すのか分からないので伝えられない。

・どういった状態に入院が必要なのか分からないので伝えられない。

 

⑨ 出来ないことを出来ないと言えない。

・自分の限界が分からず、出来ないものを出来ないと言えない。

・そもそも出来ないことを出来ると思い込んでいる。

 

⑩ 無駄に「カウンセリング」を継続する。

・終結して良いのに終結にしない。

 

⑪ 自分を講師として「カウンセラー」を養成する。

・養成した「カウンセラー」を自分の所で働かせたりする。

 

⑫ 動物の言葉が分かるとか、前世が見えるとか、守護霊と会話出来る等と主張する。

 

⑬ 自分の信仰を押し付けてくる。

 

⑭ 何らかを売りつけてくる。

 

⑮ 個人的な頼みごとをしてくる。

・来る時に○○を買って来て、など。

 

⑯ 裏付けもなく西洋医学をけなし、未知の自然療法などを勧めてくる。

 

⑰ エビデンス(証拠)の無いことを真実のように語る。

・陰謀論だとか動画サイトやネットから仕入れた情報に傾倒していて、それをクライアントに対しても熱心に説明する。

 

⑱ 食事をしたり、タバコや酒を飲みながら「カウンセリング」を行う。

 

 …といったことが挙げられます。これらは、実際に当方へ報告があった例を元にしています。

 

 なお、上記のような事柄を行うようであれば、それは有資格者であっても当然大きな問題です。

 

 

本気で心理臨床家になりたい方へ

 

 臨床心理士も公認心理師も「指定大学院」修士課程修了が受験要件になっています。

 

 心理系ならばどこの大学院でも良いという訳ではないので要注意です。

 

 「公認心理師 指定大学院」「臨床心理士 指定大学院」で検索してみてください。

 

 また、大学院を出れば資格を取れる訳ではなく、ようやく受験資格を得られるということです。

 

 大学院に行くには、当然、大学を卒業していなければなりません。

 

 公認心理師になりたい場合、大学と大学院で一貫教育になるはずですから、あなたがまだ中高生ならば、まずは適した大学から選びましょう。

 

 大学院入試では、ペーパー試験、面接、そして研究計画書というものが要求されます。

 

 大学受験までとは大いに異なりますから、ここも要注意です。

 

 特に研究計画書が難題になることが多いでしょう。

 

 研究計画書は、出願時に提出するものであり、ここでは、研究する価値のあるテーマを持っているか、ということを試されます。

 

 大学院はそもそも研究機関ですから、研究テーマが無いと入学出来ないのです。

 

 テーマの選定に関しては、普段から自分の興味関心、問題意識を大事にしておくと良いでしょう。

 

 大学院では、研究、授業、研修を課せられます。

 

 様々な療法はもちろん、検査法や研究法の授業もあります。

 

 外部施設での研修もあります。

 

 楽ではありませんが、楽しいとは思います。(少なくとも当方の臨床家は楽しかったと言っていました)

 

 大学院修了、資格試験合格、それでOKではありません。

 

 その後の継続的研修も必須で、特に臨床心理士は5年に1度の資格更新制度があるため、その更新のためにいくつもの学会や研修会への参加が必要となります。

 

 もちろん、生涯に渡る自学自習も必須です。

 

 軽く書いてもこういった感じです。

 

 中々に骨の折れる作業の連続ですが、ここを生き抜けるくらいでないと心理臨床家は務まりませんから、本気で臨床家を目指すならば、是非とも頑張って欲しいと思います。

 

 こんな所まで読んでくれたあなたが、本気で本物の心理臨床家を目指す人ならば、影ながら応援します。

 

 既に指定大学院の院生であったり、臨床心理士と公認心理師の資格取得者であったりし、一層のブラッシュアップを望む場合、勉強会開催など、いくらかの協力は出来るかもしれません。

 

 一緒に本物の心理臨床を拡げて行けることを願います。

 

 

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