ここでは、ちょっと役立つかな?といったことを書いています。
<本人以外の変容の必要性について>
臨床心理士は、個人の心理だけでなく、関係性にも大いに注目します。
個人の心理は、関係性/周囲によって形成される面も大きいためです。
例えば摂食障害のカウンセリングの場合、本人は過食をやめようと工夫を続けているのに、他の家族が「これは私が食べるのだから」と、お菓子の大袋を何袋も常備し続ける、といったことがあります。
これは「私は本人の意志を尊重しません」というメッセージになりかねませんし、実際問題として、本人が過食しやすい環境におかれる為、誘惑に負けてしまっては自己嫌悪に陥り、その嫌悪を誤魔化すのに、また過食に走る、といった悪循環が生じるなどします。
こういった関係性の問題があるため、周囲の変容も要されることが多くあります。
ペアレント・トレーニングやカップル・カウンセリングが好例です。
<DVについて>
DV(ドメスティック・バイオレンス=家庭内暴力/関係内暴力)被害者の中には、自分がDVに遭っていることを自覚出来ていない方が少なくありません。
より強い方からの一方的な命令、高圧的/威圧的な態度や言動、見下した発言等、そこに身体的暴力が伴っても伴わなくても、それはDVです。
暴力/ハラスメントは、受容して良いものではありません。
どうか「私はそんな風に扱われて当然の人間なんだ」などと思わず、ご相談ください。
<虐待について>
虐待には、「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「ネグレクト(養育放棄)」があります。
身体的虐待とは一方的な力の行使のこと、性的虐待とは性的に搾取すること、ネグレクトとは食事を与えなかったりといったことです。
心理的虐待には、無視や非論理的な押し付け、Wバインド(二重拘束:父母で言っていることが異なり、子供を混乱させる)等も含まれると考えられます。
また、夫婦喧嘩や性行為を子供の前で行い、その様子を見せる事も心理的虐待です。
虐待は、「世代間伝達」といって、親から子へと引き継がれることが少なくありません。
虐待を受けた子が親になった時、自分の子供にも虐待を行う、というものです。
これは「虐待が親子関係」と誤って学んでいるため、つまり、それしか子供と関わる方法を知らないために起こります。
なお、誤解の無いよう付記しますと、虐待は必ず連鎖する訳でもありませんし、被虐待経験者の多くは、自らは善良な親になっています。
これは、自らの被虐待経験とその加害者を反面教師にしたり、他の関係性の中で健康な親子関係/対人関係を学んだりした結果だと思われます。
もし、今、「自分が親にされて嫌だったことを我が子にもしている」というのでしたら、それが正しい子育てだと確信していたとしても、すぐにご相談ください。
もっと子供を傷付けず、親も楽しい関わり方がないものか、一緒に考えましょう。
また、よそのお宅に虐待が疑われる場合、それを知った人には通報義務があります。故意の嫌がらせでなければ、通報内容に誤りがあっても罰せられるなどはありませんので、即刻、児童虐待通報(189)か児童相談所に連絡してください。
<教育虐待>
一般的(法的)には、虐待の種類として明記されてはいませんが、教育虐待という考え方があります。
親(養育者)としては、「子供のためを思って」と必死に勉強や習い事をやらせよう、上達させようとするのですが、子供が出来ない時に怒鳴り散らしたり、延々と説教をしたり、体罰を加えたり、といったことがある場合、それは教育虐待と呼ばれます。
子供の人権や人格を無視/否定した指導のことを教育虐待と呼ぶのだと考えられます。
もし、少しでも心当たりがあるならば、出来るだけ早く、我々専門家に相談してください。
何が健全な指導/教育で、何が虐待なのか、どうしたら虐待にならないのか、一緒に考え、健全な対応法(子育て方略)を作り出しましょう。
<虐待(ぎゃくたい)について こどもさんへ>
おとなからいじめられたり、嫌(いや)なのにさわられたり、無視(むし)されたり、ごはんをもらえなかったりしているなら、すぐに児童虐待通報(じどうぎゃくたいつうほう)か、児童相談所(じどうそうだんじょ)に電話(でんわ)してください。
児童虐待通報(じどうぎゃくたいつうほう)
189…これが電話番号(でんわばんごう)です。
近(ちか)くの児童相談所(じどうそうだんじょ)に繋(つな)がります。
匿名(とくめい=ないしょ)での通報(つうほう)/相談(そうだん)が出来ます。
福島県庁中央児童相談所(ふくしまけんちょう ちゅうおう じどうそうだんじょ)
024ー534-5101
学校(がっこう)に行(い)けているなら、スクールカウンセラーや保健室の先生(ほけんしつのせんせい)にも相談(そうだん)してみてください。
それでも苦しみ(くるしみ)が続いたり(つづいたり)、近く(ちかく)に相談出来る(そうだんできる)おとながいないなら、私達(わたしたち)に連絡(れんらく)してください。
もちろん、近くにおとながいてもいなくても、私達に連絡してくれれば協力(きょうりょく)します。
<躾(しつけ)と怒りについて>
躾と称した虐待もあります。しつけとは、漢字の通り、身を美しくするものであり、親が子をコントロールするための手段ではありません。
親が子をコントロールしようとして怒っているのは、まさに感情的な「怒り」であり、それは躾の際の「叱る」こととは別種のものです。
叱る際、そこには「〇〇だからいけませんよ」といった、「社会的に認められる論理」が存在しているはずです。
「頭に来たから叱った。それでつい手が出た。子供が悪いんだ、私は悪くない」といった言葉が出るならば、それは、叱った(論理)ではなく、怒った(感情)だけです。
<ハラスメントについて>
権力や力の不均衡があり(親子/上司と部下/教授と生徒/先輩後輩…など)、より力の強い方が、より力の弱い(抑制せざるをえない立場の)方に一方的に何らか、弱い立場の方が嫌がるような事をする、という構図は、全てハラスメントと言っていいと考えられます。
<いじめについて>
ハラスメント同様、力の不均衡があり、一方的に暴力(陰口など心理的暴力も含む)を振うことは、すべからくいじめと言えます。
いじめに正当な理由など一切ありません。(ハラスメントも同様ですから、以降出て来る「いじめ」を「ハラスメント」に置き換えても通じると思います)
目立つからといじめられ、目立たないからといじめられ、果てには普通過ぎるからといじめられる。これは実際にあったケースの話です。
「いじめられる側にも問題がある」という人が必ず居ますが、何かあるなら、いじめ以外の方法で主張すれば良いだけです。
いじめという手段をとる必要はまるで無いはずです。その手段をとった責任は、間違いなく、いじめ加害者にあります。
外国には、「ゼロ・トーレランス(いじめへの我慢は0に)」といった考え方を導入している所があります。
今、いじめを受けているならば、どうぞ卑屈にならず、正々堂々と大人に相談してください。協力を求めてください。
加害者は「大人に言いつけるなんて卑怯だ」「チクるなんて汚い」などと言うでしょう。しかし、本当に卑怯なのは、汚いのは、大人に言われてはまずいことをし、しかもそれをあなたに隠すように強制してくる人達の方です。
被害を受けている方は「自分が耐えれば良い」などとも思わないでください。加害行動はエスカレートします。または、あなたが被害を受けなくなったとしても、他の被害者を出すことになります。
酷い暴力で応戦する事もお勧めしません。それはあなたの人生を傷付ける事になる可能性が高いでしょう。(正当防衛は、また別の論題)
本当の勇気/強さとは、正義を貫く事であり、悪いものは悪いと断じ、公にする事でそれ以上の被害の拡大を許さない事だとも定義出来ます。
それを1人で行うのは大変な事です。どうぞ大人と共闘してください。頼られた大人は、どうぞ逃げずに知恵を絞ってください。少しでも必要ならば、我々臨床心理士を遠慮なく利用してください。
今、いじめをしているなら、すぐにやめ、いじめ以外の適応的な方法を学びましょう。臨床心理士ならば、その方法をあなたと一緒に考えてくれるはずです。
いじめは連鎖します。あなたもその連鎖の中に居るのかもしれません。ということは、あなたでその連鎖を断ち切ることも出来るのです。
「なんで僕/私だけいじめられなきゃならないの?僕/私にもいじめる権利はあるでしょ」などと思わないでください。誰にも「誰かをいじめて良い権利」など無いのです。
いじめの連鎖を断ち切るのは、とても勇気と労力が要ることです。これは虐待の世代間伝達とも共通しています。
なぜなら、いじめという方法だけが、その人が知っているある種の対人関係の方法かもしれないからです。
適応的(健全な)対人関係を学びましょう。作り上げましょう。あなたまで縛っていた悪循環の繋がりをあなたで終わらせましょう。
そのためならば、我々臨床心理士は大いに協力します。